『ピンクパンツ!』

 萌兄

 貴方は、中古の宇宙船を持っていた。例えば月までさえ、行けそうも無いやつさ。だけどね、そんなこと僕には関係なんかないんだ、だって、必要なのは「ミキサー車」なんだから。

 

アイツはスーパーでパンツを買ってきた。三枚入りで、五百円の奴だ。勿論それはメイドインチャイナ。貿易摩擦で、地球は温暖化するのかい?

 「知らないよ。」

 そしたら、そのパンツ、よく見れば女物。こんなの履けるか。かわいいリボンまで着いている。「どうするか?」「知らないよ。」「よくもまあこんなもの買えたな。」「恥ずかしかったよ。」「そりゃそうだ。」「でも盗むよりましだろう。」「どうだかな?」「ピンクが良いなぁ。」「何だよ、急に?」「パンツの色さ。」「じゃあ最初からピンクのを買ってくればよかったじゃないか。」「恥ずかしかったんだよ。」「何を今更。」「だって、ピンクって女の子向けだろ?」

 だから、そういうわけで、白いパンツを如何にかして、ピンクに染めなくてはならなくなった。だけどもう桜は咲いてない。如何しよう。絵の具さえこの街じゃ見つけずらい。

 

 そこで思いついた事といえば、「ミキサー車」

 とても便利な機械なんだよ。「ミキサー車」

 だから俺は、貴方に借りた、ボロボロの中古のUFOに、アイツとパンツを詰め込んだら、導火線にジッポあてて、「そうさ、星に着けるさ。」と言ってやる。

でも、実際には星に着くその前に、ブースターの異常、落ちてゆくUFO、地面で転が転がればミキサー。

「人間は不公平なんかじゃないんだ。だって、どんなに美人だって不細工だって、女だって男だって、例えば他にも地位とか名誉も、そんなもの何にも関係なく、ミキサーにかければ、肉は真っ赤なジャムになって、骨は真っ白い粉になって、ジャムパンまでは作れないけど、かわいいピンク色には成れる。」

 

その後、僕は恐る恐る宇宙船のハッチを開ける。

結局、中身を見てもアイツが如何してピンクのパンツなんて欲しがっていたのかは、最後まで解らなかったし、それに加えて貴方は「宇宙船には誰が入っていたんだい?」なんて僕に尋問する。

「かわいいピンク色のパンツですよ。」と僕は短く答えて、ただただ、そのパンツのかわいさに嫉妬した。


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