『さよならメイド先生』

 

先週、うちの担任の女教師が、生徒とコレがアレでこうなったので、産休に入りました。

そしてその代わりに来たのは、何とメイドさんだったのです!

 

『第一話、メイド先生と男子生徒』

朝から校長の好調な朝礼の挨拶は、とてもクレイジーで、観衆である生徒達の心を掴んで離さない。校長は、まず咳払いを一つしたかと思うと、なにやら説教を始める。そうだみんな騙されているのだ!僕は一週間前にこの高校に転校してきたので解るのだ、ココの校長は、まるで新興宗教の教祖のように生徒の前で振舞うのである。

それがどんな振る舞いであるか……それはもう、凄いなんてものじゃない。でもこの小説は、メイド先生に関わる一連の騒動をまとめる為のものなので、あえて校長の行為には言及しない。

メイド先生はそんな何時もの、朝礼で、産休に入ったウチの担任教師の代わりとして紹介された。メイド先生は可憐な雰囲気を持つ女性だった。体を触ればきっと柔らかいに違いないと思った僕は、一目でメイド先生が気に入った。

程なくして、僕を含めて、生徒は全員教室に返され、朝のホームルームが始まる。今日の日直は、僕の二つ前の席の、女子で、彼女はこれから来るであろう、メイド先生にどんな顔で、挨拶すればいいのか迷っている。

例えば、笑顔で挨拶すれば、それなりに友好的な関係を築ける可能性が高くなるが、あいにく、うちのクラスには、悪い連中も多いので、下手に教師と仲良くすると、後で因縁付けられて、男子なら集団リンチ、女子であればイタズラされかねない状況なのだ。

じゃあ、何故、前のうちの担任が生徒とそういう仲になれたのか?気になるところだが、あいにく僕はこの学校に来て間もない身なのでその辺のところはよく解らない。

そんなふうに考え事していると、教室のドアにノックの音が響き、次の瞬間、あのメイド先生がしとしとと歩いて教室の中に進入してきた。皆、一応ここは静かに迎える。いくら悪い奴らが巣食っている我がクラスといえども、入ってきて早々罵声を浴びせたりはしないようだ。僕は内心胸を撫で下ろした、しかしその瞬間だった。

メイド先生は言った「この教室に、ご主人様はいらっしゃいますでしょうか?」と。

ふつう、新任でも転任でも、教師は初めて、自分の受け持つクラスに入った場合、自己紹介と相場が決まっているのに、このメイド先生は、自分の事はおろか、生徒たちに自己紹介をさせるでもなく、何を血迷ったのか、ココに居るはずもない、ご主人様が居ないかと、真剣に訪ねているのである。

僕は、内心このメイド先生はおかしな生き物なんじゃないかと思った。しかしそんなふうに、目の前の出来事を冷静に見つめている理性に対して、僕の中の野生が、僕の思ってもみなかった事をさせる。

僕は気づくと、いつの間にか、椅子から立っていた。クラスメイト達は一様に僕を怪訝そうな女目つきで、見上げている。しかし、野生に落ちた僕にはそんな視線を感じる理性は残されていない。

口が開いた。まるで他人の口が大きく開いているのを何となく眺めているような気分で、僕はそれを感じたが、開いたのは紛れも無く、僕の口。吐いた言葉は僕の声。

「ご主人様?それは僕のことを呼んだという事なのかな、メイド先生。」

それが、僕とメイド先生の出会いであり、これから起こるであろうメイド的な事件の始まりだった。

 

 

『第二話、メイド先生、父と乳を間違える』

クラスは呆然としている。皆、メイド先生のおかしな質問と、この僕の呆れた答えに口が開かない様子だ。

しかし、驚いているのはクラスメイト達だけでは無かった、この一連の流れを作ってしまったメイド先生、その人も愕然としている。

教室にいつ終わるかも知れない、沈黙が襲い掛かる。僕はこの時ほど、人間が本質的に沈黙を恐れるのだという事を知らしめされた事は無かった。

「はにゃ、ふぇ―ん。」

アニメのような人の泣き声がその沈黙を破った。

そう、この余りにも重たく、ぶ厚い静寂をいとも簡単に破り捨てたのも、メイド先生その人だったのだ。

メイド先生は可愛らしく涙を零しながら、教室の外に出て行ってしまった。そして対に僕の見方は一人も居なくなった。

 

数分後、校長が教室に来て、メイド先生はちょっと体調が悪いからと、一時間目は自習にしますと言って、外に出て行くと、再び室内には沈黙が宿る。しかしこの沈黙は先ほどの沈黙とはまるで別の性質を持っている。

皆、さっきは何をすればいいのか解らず、沈黙していた。しかし今は、それとは逆に、皆、何をすればいいのかちゃんと解っている。コレは所謂、嵐の前の静けさという奴だ。

しかし、僕だってただ、こんな四面楚歌の状況下に置かれ、これからどうしようかと、オロオロしているだけかというとそうじゃない。もう僕は高校生だ(ちなみに二年)、子供じゃない、解っている。解りきっている。これからどうすればいいのか、簡単だ。もう、このクラスにおいての、平凡な転校生という地位を失ってしまった以上、もう、何も気兼ねする事はないのだ。そう、僕は今や、メイド先生の主人なのである。メイドが主人の奴隷であるなら、教師の奴隷である生徒たちもまた、主人、つまり僕の奴隷なのである。

「おい、お前。何、調子に乗ったこと、かましてるんだよ。」

嵐の前の静けさという、あまりにも陳腐な沈黙を破ったのは、これまた貧相な精神の、クラスのゴロツキバンチョウで、それを引き金に、まるでダムに小さなひびが入り、そこから一気に決壊に至るように、クラス中から僕に向かって、罵倒がぶつけられる。

しかし僕は、全く気にならなった。奴隷の訴えに、いちいち耳を貸してやるほど僕は、気のいい主人ではない。僕はメイド先生の誇り高き主人なのだから。

 

そのころ、メイド先生は保健室で、自分の心を落ち着かせようと必死だった。しかし心的な気分の高揚は、肉体へと伝染し始めている。

「はあ、はあ。そうです、私は先生なのですぅ。初対面の生徒には、自己紹介をしないと……それが普通ですよね。」

メイド先生は、常識という理性の盾に逃げ込もうと必死にもがいている。しかしそれが逆にあだになった。

「えと、えとですぅ。私はメイドで先生なのですぅ。生まれはメイドの里で、母親はメイドで、父は……ちちは……お乳は!」

メイド先生のユルユルの理性は、その火照った体も手伝ってか、その一言で、簡単に散っていった。

ベットに座っていたメイド先生は崩れるように倒れこむ。そして、そこに居合わせた、保健医の先生がそれを見逃すはずは無かった。

 

 

『第三話、メイド先生SOS!』

「てめえ、無視してんじゃねーよ。」

僕の態度をおかしく思ったゴロツキバンチョウは遂に席から立って、僕の前までやって来た。僕は微動だにしない。する必要さえない。簡単な事だ、主人に歯向かう奴隷は消すまでの事だ。こんな事もあろうかと思って、僕は前からこの教室に自爆装置を仕掛けておいたのである。

「この、何か言えよ、ぶっとばすぞ!」

ゴロツキバンチョウの腕が振り上げられた瞬間、僕は素早く、教室から抜け出す。その際に、先ほど、ホームルームで自分の置かれた状況に戸惑っていた、僕の二つ前の席で、本日日直の女子を、一緒に連れてゆくことも忘れない。

「ぶっ飛ぶのは、YOU達の方さ!」

僕は腕時計型、自爆ボタンを押した。0.5秒後、教室は閃光に包まれ炎上した。僕は、それを見届けると、騒ぎになる前に、メイド先生を捕獲するため、うろたえ、混乱している、日直の手を強引に引き学校の階段を下りてゆく。

 

「ひゃん、やめてくたさいですぅ。」

保健医の先生は、メイド先生に馬乗りに成って襲おうとしている。

「ふふふ、誰も助けになんか来ないわよ、何だか知らないけど、さっきから学校中大騒ぎのようだし、保健室の鍵は、こんな事もあろうかと思って、私にしか開け閉めの出来ない、超高性能三重式ハイテク錠にしてあるから、逃げようとしても無駄よ。」

「いや、いやっ、後生ですから、やめてくださいですぅ。わたし、こんな所で。」

そう、こんな所で、殺されるわけにはいかないのだ。まさかこの学校の保健医が、あのファンキーでフェティシュな人食い怪人、マダムアマゾネス3世だったとは、こうやって襲われる、今の今まで気付けなかった事に、メイド先生は、心の底から後悔した。

そうこうしているうちに、あらまあという感じに、マダムアマゾネス3世の鋭い牙が、メイド先生の白い首筋に突き刺ささろうとした。

しかし、その瞬間である、保健室のドアが吹き飛んだ。

「保健医さん、メイド先生は僕のものだ、返してもらうよ。」

「お前、わらわの超高性能三重式ハイテク錠をやぶったというのか!」

「ふふふ、こんな事もあろうかと、保健室のドアに、あらかじめ自爆装置をしかけておいたのさ。」

「おのれ、こわっぱが、しかし、お前に何が出来る。わらわが、この鋭い歯で、ひと噛みすればこのメイドもお陀仏じゃ!」

「保健医さん、僕はあなたと、喧嘩しにここに来たわけじゃない、取引をしにきたのです。」

「取引だとぉ?」

「そう、取引です。どうです、この女子。肉付きもまあまあ、ですし、乳も柔らかそうでしょ。」そう言いながら、僕は教室から手を引いて、連れてきた日直の女子をマダムアマゾネス3世に前に突き出した。

「ひひひ、乳が柔らかそうだと、乳の柔らかさならこのメイドのほうが上に見えるがな、その程度の女と、このメイドを交換する?馬鹿を言うでないわ!」

「そうですか、これでもクラスで一番、乳の柔らかそうな女子を連れてきたというのに、本当に、取引には応じてはもらえないのでしょうか?」

「何度も言わせるでない!わらわは、このメイドを食らうのじゃ!」

「何度もとは、こちらの台詞ですよ、せっかくこちらから譲歩して、取引をしたいと何度も申し出たというのに、そちらがその気なら。」

 

 

 

『第四話、ショットガンとメイド先生。』

「うぎゃあああああああああああっ。」

マダムアマゾネスが吹き飛んだ。何のことはない、こんな事もあろうかと思って、あらかじめメイド先生のスカートの中にショットガンを隠しておいたのだ。

そして、内股に違和感を覚えたメイド先生が、ショットガンの存在に気付き、マダムアマゾネスが、僕との駆け引きに夢中になっている隙に、マダムアマゾネス目掛けて、ゼロ距離射撃をしたというわけ。

「うがあああ。」

右肩が半ば爆散した、マダムアマゾネスは、保健室の床を転げまわっている。

僕は、この隙を逃すことなく、発射の衝撃で少しふらついているメイド先生の手を引いて、走り出す。

そう、走り出したのだ。

「どこに行くのですか?これから授業があるというのに!」

メイド先生がそんなつまらない事を聞くので、僕は答える。

「ピクニックに決まってるじゃないか!」

 

秋の海は、台風でも着てない限り静かなものだ。メイド先生と僕は、あれから盗んだバイクで走り出して、房総半島の先っちょまでドライブ。到着した頃には、海に沈む夕日は綺麗で、ずっと2人で見とれていると、当然のことながら、まもなく太陽は姿を消して、あたりは当然、田舎だから真っ暗になった。

そう、本当に真っ暗に。解っている、これは罠だ、あの学校に一週間前に転校して来て、初めに校長に挨拶した時から、こうなることは何となく解っていた。だから、いろいろと準備も出来たのだが……校長、彼は確かに今は校長だ、しかし校長でありながら、他の一面も持っている。それが何なのか、今のところは、解からない。確かめようにも周囲がこう暗くなってしまっては、どうしようもないし、ライトが点くはずのバイクも丁度ガス欠で使えない。

「ご主人様、どうなさいますか?」

メイド先生は、今朝アマゾネス三世を粉砕したショットガンを小脇に抱えて、興奮している様子だ。大丈夫、僕が指示を与える前に、校長から何らかのアクセスがあるはずだ。それが交渉か、攻撃か、はたまた洗脳光線か、今のところは判断しかねるが、何かしら起こることには違いない。そう、メイド先生への指示はそれからだ。

 

半時ほど経って、不意に波の音が消えた、水面には皺ひとつ無く、ただ水平線まで、まるで綺麗なガラスのように繋がっている。

「来る!」

僕は叫ぶ、メイド先生はしゃがみ込んで、それでも常時ショットガンを打てるよう、安定した体勢をとろうとした、その瞬間、凍りついたような水面から、僕と同じ高校の制服を来た少年が猛スピードで接近してくる。

「はにゃ。」

メイド先生は動揺している。無理も無い、異形のマダムアマゾネスならともかく、人形をしたままの存在を、一介のメイド先生が撃てるはずは無いのだ、だって、そうプログラムされてるから。

「メイド先生、逃げるんだ!」

そう言われる前にメイド先生は逃げ始めている。これもプログラム通りというわけか。なかなか人間の痒いところに手が届くプログラムだ。うまく使えば、宇宙まで行けそうだ。そう、宇宙。僕等は宇宙に行くために、このプログラムについていろいろ調べてきたのだ、何のためかは後から考えようと思っていたが、今決まった。

そう、あの宇宙人………校長を倒すためだ。

 

 

『第五話、夜明けのメイド先生。』

 

メイド先生が逃げ回っている。それを、海から続々上陸してきた生徒が追っている。その生徒の数は、時間を増すたび増加して、今ではメイド先生を先頭にした行列のようになっている。

僕は、メイド先生が生徒たちを引き連れて遊んでいる隙に、ポケットから携帯を出した。僕の携帯は、そこら辺のものと違って、ちゃんとパソコン用のOSの入った、キーボード付のごつい奴で、いつでもプログラムを書き換えることができるのだ。

僕は、早速、プログラムファイルを開き、メイド先生に使われている画像の素材集のフォルダを開ける。現在、ワンピースに使われているテクスチャは唯の、紺色の布ようなものだが、それを、この夜空から切り取った、満天の星空の柄と交換してみる。すると、あら不思議。メイド先生のワンピースはどんどん夜色に染まり、終には夜空、いや宇宙そのものになった。

「おーい、メイド先生!」

手を振って、メイド先生を呼び寄せる。メイド先生は、まるで飼い主に呼ばれた、小動物のように目を輝かせてこっちに来る。

僕は、メイド先生を捕まえた、メイド先生のショットガンを持っていない片手と自分の片手を強く握って、そして同時にメイド先生のワンピースに飛び込んで宇宙空間に飛び出した。

最初、宇宙には空気は無いものかと思ったが、意外にあるみたいで、どうやらここは宇宙というより、何となく宇宙っぽい所らしい。

しかし、感動している場合ではない、目の前には校長が居る。

「おお、君。駄目じゃないか、保健医の先生を撃って、教室を爆破して、バイクまで盗むなんて、これは退学もありうると思ってもらわないとな。」

校長は実に冷静にそう言った。しかし、冷静さならこちらも負けていない。

「校長、何故、あなたは、本当の宇宙でなくて、こんなもどきの宇宙にいらっしゃるんですか?もしかして、あなたも、もどきの宇宙人なんじゃないですか?」

「ばかな、ワシが、もどきなはずが無かろう!ワシこそ完全なる存在なのだ!」

「ほほう、本当にそう思ってらっしゃるのなら、僕の後を追ってきてください、そこで決着をつけましょう!」

「望むところだ!」

僕は、繋いでいるメイド先生の手を引いて合図し、引っ張ってもらい外に出た。メイド先生はまだ、生徒たちと走り続けていた、しかし宇宙と、地球とでは時間の流れに差があるのか、夜はもう既に明けようとしている。

次の瞬間、校長も、メイド先生のワンピースから転げだした。メイド先生は、それにすかさずショットガンの散弾を至近距離から3発ほど撃ち込んだ。さすがの校長も地球への扉がワンピースだとは思わなかったのだろう、意外なところから飛び出して、しかも僕のようにメイド先生の手に支えられていたわけでも無いので、体勢を崩している間に、メイド先生のきつい一撃を、3発も食らってしまったのだ。

しかし校長の不幸はこれで終わらない、ダメージをうけ、倒れた校長にさらに追い討ちが襲う。メイド先生の後ろで倒れた校長は、メイド先生の後を追ってきた生徒たちの進路の上だ、そのまま何百人の生徒たちに踏まれて、こねくり回され、いつの間にかすり潰されて、体は粉になって早朝の風に流されて消えた。そして、その風の行方には、もう、どぎついまでのオレンジの朝焼けが輝いている。

 

 

『最終話、さよならメイド先生。』

朝焼けに向かって、僕達は走っている。普通は夕焼けに向かって走るのに、僕たちときたら元気に朝焼けに向かって走っている。

何故、普通は夕焼けに向かって走るのだろうか?そんなことは簡単、だって夕焼けに向かってなら、走っても、その後はせいぜい、飯でも食って風呂はいって寝るだけだからだ。

でも、僕らは、朝焼けに向かって走っている。この後、朝飯食って、歯磨いて、学校に行って、授業受けて、昼飯食って、昼寝して、部活に出て、おやつをつまんで、やることでいっぱいだ。もう疲れきっている僕等にそれができるのか?

「メイド先生、辞めないでください。」

後ろを走っている生徒の一人が唐突に叫んだ。それを皮切りに、生徒たちは、自らの想いを語り始める。

「メイド先生は、僕達に人を愛することの喜びを教えてくれました!」

「メイド先生は、私達に努力することの素晴らしさを教えてくれました。」

「メイド先生は、こんな俺にも、いいところがきっとあるって言ってくれた!」

「メイド先生は、自殺しようとしてた私に、命の尊さを教えてくれた。」

「メイド先生は、やり遂げることの大切さを教えてくれた。」

「メイド先生は、モダンポップなサウンドを俺に教えてくれた。」

「メイド先生は、私がお弁当を忘れた時、おかずを分けてくれた。」

「メイド先生は、私に女の幸せとは何か、伝授してくれた。」

「メイド先生は、僕に、合体変形の仕方を教えてくれた。」

「メイド先生は、鶏肉が好きならしいですよ。」

そして最後に全員で、

「だから、メイド先生、辞めないでください!」

そんなふうに、皆、勝手なことを言う。僕は無性に腹が立った。だって、メイド先生は、もう僕のメイドなのだから、メイド先生をどうするかは、生徒達が決めるのではなく、僕が決めるべきなのだ。

「メイド先生、僕は君の主人だ、君は、僕のメイドだ、僕の奴隷だ!だから、僕のメイドとして暮らすんだ、それ以外は許さない。」

「ご主人様・・・」

朝日に向かって走っていたメイド先生の足が止まった。

「そうですぅ、危うく、情に流されてしまうところだったですぅ。私はもう、先生ではないのです。ご主人様のメイドですぅ!」

メイド先生はそう宣言した。白く昇ってゆく朝日をバックに堂々と宣言した。生徒達はその宣言が耳に入ると、まるで操り人形の糸が切れたかのように、立ち止まりうな垂れた。

 

そう、メイド先生のメイド宣言をもって、戦争は終結したのだ。

 

そして、僕とメイド先生は学園を去った。今なら解かる。メイド先生がこの高校に赴任してきた理由が、そう、メイド先生が来る前もきっと他のメイド先生が、このクラスの受け持ちだったのだろう。生徒とできてしまって、学園を去ったと聞いたが、きっと、今の僕等と同じようなシュチュレーションだったに違いない。

そう、メイド先生達は、メイドに成るためこの学園に来るのだ。子供が大人に成るために学校に来るように。そして、僕が主人に成ったように・・・

 

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